杉並で、障害当事者の自立生活実現をめざす取組みの紹介です。


by tukurukai
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数は増えたが、安価なLSSによる支援


LSSによる支援は依然として増加している、しかし、一人あたりに使われる経費は減少している。といった事柄が社会庁の2005年度の現状報告により判明した。

2004年度には52900名がLSS(助言とアドバイスは除外して)による一つまたは幾つかの支援を受けていた。ということは、2003年度に比較して人数が2,6%増加したのだ。増加しなかった支援タイプは、肩代わりサービス支援、パーソナル アシスタンス、児童のための住居だった。同時に、65歳以下の21700名の機能障害者が社会サービス法による援助を受けていた。この数字は3,2%の増加に相当する。

LSSによる支援の増加は、1999年度以降80%のコミューン(市)で見られるが、その半分強が社会さービス法による支援を増加していた。ということは、障害者福祉が継続的に増加しているとは、かならずしもいえないことだ。

表 1は、2004年度のコミューン(市)による支援と、その変化をパーセントで表している。1999年度以降もっとも増加した支援形態は短期学童ケアだ。短期学童ケアとは、12歳以上の児童を対象としての平日の授業時間の終了後と学校が休みの間のケアだ。

社会サービス法による支援は、ニーズ査定によるショートステイ ケアが最も多く増加している。このショートステイ ケアとは、治療、リハビリ、肩代わりサービスや交換ケアなどを含んでいる。

表 2は、2004年度の機能障害者への様々のコミューンによる支援経費の上昇と、2000年度からの固定経費(ビリオン=10億Kr)の変化を示している。

2000年以降、コミューン(市)の経費は17%増加した。増加が最も顕著だったのはパーソナル アシスタンスで41%だった。

表 3は、2004年度の機能障害者へのある特定の支援への費用と2000年度からの固定経費の変化を示している。

LSSによる住宅における障害者一人にかかった経費は、デイ活動の場でと同じく継続して減少している。その理由は、住宅での職員数の減少と、デイ活動の場でのグループの人数を増大したことによる。さらに、サービス住宅の数が増え、同時にグループ住宅が減少したことにもよるだろう。残念ながらこの統計には、サービス住宅の増加とグループ住宅の減少などの数字が含まれていない。支援を受けている障害者一人あたりにかかった経費は減少しているが、支援を受けている人達の数は増えている。2003年度と比較してみると、特別住宅で生活する障害者の数は800名多くなり、デイ活動をしている人達は1100名増えている。

14の県庁は、障害者を対象とした事業体は、コミューンの資源不足のために否定的な影響を受けていると報告している。こういった現実は、LSSが個人に与えている権限を限定するような方針をとっているコミューンもあるということからも分かる。資源が減少しているということは、事業体がより大きなユニットに合併されたり、障害者数に対する職員数が減少したり、職員の継続教育を減少されていることで示されている。

この現状報告は、スウェーデン国内の3つの大都市では、その他のコミューンと比べて、LSSによる支援を受けている機能障害者数が少ないという、よく知られている事実を立証している。大都市では、平均して人口1万人あたり49名の障害者がLSSによる支援を受けているが、中程度のコミューン(人口10万人 - 25万人)では、人口1万人あたり63名の障害者が支援を受けている。しかし、これら中程度のコミューンではLSSによる決定された支援を現実に実施していない数も多くなっている。概して、市民が流出していってしまっているコミューンの方が、人々が移入してきているコミューンよりも、支援を受けている人は平均してやや多くなっている。

この報告では、ある特定の機能障害者の生活状況に関する調査結果も記載されている。中央統計局の住民登録記録と社会保険事務所の、アシスタンス補助金、車の改造支援金、介護手当て、障害手当てを受けている人達の記録とを照らし合わせ調査している。この調査は、純然たる統計記録の調査であり、非常に厳しく限定されておりさらに詳しく個別の事情調査をすることは出来ないものだ。この結果、立証されていることは、私達がすでに承知していることで、機能障害者はその他の一般市民に比較して経済的に恵まれていず、一般労働市場での就労者が少ないということだ。生活状況をより的確に把握するための方法を改善する努力がされている。こういった改善作業は2010年度までには終了の予定だ。

この報告書を判読した印象は、野心的な統計で人数や経済的な状況に重点がおかれているというものだ。今回初めて特に高齢者の状況を取り上げているが、不思議なことに児童や青少年については取り上げていない。不思議だというのは、児童や青少年に関する毎年の統計を利用すれば、成人への支援のニーズに関する予測が可能となるからだ。さらに、職員に関しても何ら触れていない:職員の数、教育程度、継続教育程度。

それだけではなく、LSSの最も活用されていない第15条についても触れていない。第15条には、コミューン(市)が、どういう人達がLSSの対象となっているか、これらの人々は、どういった支援やサービスを受ける必要性があるかを、継続して追跡し把握していなければならないと記しているからだ。社会庁は、裁判所から連絡されてくる判決のみを解析しているが、連絡がない判決については何もしていない。そろそろコミューン(市)が、様々の数字を提示する時期ではないだろうか?私は、コミューンに提示を求めても多くの回答はもらえないであろうと確信している。

今回の報告書の最も良いところは、やっと社会サービス法によるものと、LSSによる支援の両方の統計が分かったということだ。同じタイプのグループの人達に関する2つの異なる法律について、専門家に質問しなければならない人達が多くなっている。しかも、これらの法律が支援を必要な人々を、専門能力のある職員によるケアを受けられるように、LSS対象グループ一つに集合させないで、みかけを良くするような方法で2つに分けてしまっているのだ。

こういった事柄が、社会庁により考慮されないならば、社会サービス法による支援を受けるか、LSSによる支援を受けるかの分割は、重要な課題となろう。そのためには、個人に関する情報をベースにした統計の必要性ということに関して考慮するべきよい理由となっている。

さらに、報告書は、障害者部門においても、高齢者部門にあるような統合的な研究開発事業体の必要性もとりあげている。こういった考えには同意だ。研究者レベルの能力とコミューン レベルの能力の差は恐ろしいものだ。さらに、コミューンは、支援要請、待ち時間、支援要請の却下、支援提供決定で実施されていない事柄、さらに支援を提供したことの効果などについての統計についてもより開発させなければならない。このことは、社会サービス法、またLSSによる支援の両方にあてはまる。

報告書では最後に、一般社会においてその他の団体や企業などが実施する合理化が、コミューンの負担増加になっているという状況について触れている。それは、たとえば機能障害者で有給の就労をしている人達の数が減少しているというようなことだ。この結果コミューンはデイ活動の場を増加しなければならなくなる。こういった場合には、連携作業がまったく稼動していない。コミューンは、どういった人達が、疾病手当てや活動手当てを受けているかに関する情報でさえも受けていないのだ。

カール グルネヴァルド
社会庁。障害者福祉。現状報告2005年度。www.sos.se

LSSと社会サービス法

この2つの法律の違いは、LSSは知的障害のある児童と成人、その他の重度の機能障害のある人達への支援をコントロールしているが、社会サービス法は、日常生活を送る場合に非常に困難である機能障害者への支援をコントロールしている。LSSによる支援は障害者にとっては無料だか、社会サービス法による支援は、コミューンが利用者負担料金を課すことができる。



表 1: 1999年―2004年度の間にコミューンからLSS支援を受けた人達

コミューンの支援            1999年   2004年   変化

パーソナル アシスタンス            4500人   3900人   -13%
ガイドヘルパー                 7400人   9400人   +27%
コンタクトパーソン              13400人  16100人   +20%
肩代わりサービス                3600人   3700人    +3%
ショートステイ                 9400人  10500人   +12%
短期学童ケア                  2800人   4400人   +57%
児童住宅                    1200人   1300人    +9%
成人住宅                   16500人  19800人   +20%
デイ活動                   19800人  24100人   +22%


表 2: 2000年―2004年度の間のコミューンによる機能障害者への様々の
支援にかかった経費の変化(1)
2004年度の固定経費の価格を基礎にして計算したもの。(10億Krの単位)

支援                2000年   2004年     変化

閉鎖型施設での支援
Sol/HSLによる特別住宅
における支援とサービス      2,9      2,8    -1,0%
LSS住宅                 12,6     13,9   +10,3%
開放型支援
Sol/HSLによる普通住宅
での支援とサービス       2,7      3,2   +19,6%
開放型事業体(2)                       0,7       -
LSSによるデイ活動             3,9      4,2    +9,1%
LSSによるパーソナル アシスタンス
とLASS(コミューンの割合)     3,6      5,1   +41,1%
LSSによるその他の支援           2,7      3,3   +22,8%
合計                    28,2     33,1   +17,3%
その内の開放型支援以外の
Sol/HSLによる支援            5,5      6,0    +8,9%
その内のLSSとLASSによる支援      22,7     26,4   +16,5%

(1)総経費から、内部収入、その他の市やランドスチングにケアを売ったことによる収入、さらに、社会保険事務所からのLASSへの補助金を差し引いたもの。
(2)2002年度から開放型事業体は別途に会計報告している。


表 3: 2000年度から2004年度の間に、機能障害者への4つの支援にかかった経費とその変化。2004年度の固定経費の価格を基礎にして計算したもの。

支援           経費/人/2000   経費/人/2004      変化
Sol/HSLによる特別住宅  468,300     472,800     +1,0%
LSS住宅           685,000     631,400    -7,8%
LSSによるデイ活動      190,200     174,200    -8,4%



訳 友子ハンソン  スウェーデン イエテボリ市在住  同市公式通訳
by tukurukai | 2006-08-24 07:23 | スゥエーデン情報